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第56回人権擁護大会(広島大会)報告

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10月3日・4日と広島で行われた第56回人権擁護大会に出席してきました。 人権擁護大会は,全国の弁護士が1年に1度集まり,1日目に3つの分科会に分かれて講演・パネルディスカッション等が行われ,翌日の全体会議で決議を行い,宣言として発表するものです。 埼玉弁護士会の人権擁護委員会に所属しているため,第54回香川大会,第55回佐賀大会に続き,3回目の出席。

 

今回は,「なぜ,今「国防軍」なのか―日本国憲法における安全保障と人権保障を考えるー」に参加,集団的自衛権,憲法改正の問題について議論が交わされました。 そして,全体会議では,次のような提言が採択されました。

「不戦」は人類の等しく共有する痛切な願いである。日本国憲法は過去の軍国主義の歴史と先の大戦の惨禍からの深い反省に基づいて,憲法前文に平和的生存権を謳い,憲法9条に戦争の放棄と戦力を保持しないという徹底した恒久平和主義を定め,国家権力に縛りをかけた。この憲法前文と9条は,戦後68年間,戦争を防ぎ,わが国の平和を確保するうえで重要な役割を果たしてきた。ところが今,この戦争防止のための条項をなくそうという憲法改正の動きが強まっている。

近時公表されている憲法改正草案は,平和的生存権を前文から削除し,「戦争の放棄」の章題を変更した上,戦力の不保持・交戦権の否認を定める9条2項を削除して国際的軍事協力も任務とする「国防軍」等を保有する規定を設けるとするものがある。このような「国防軍」は,日本の国土防衛の枠を超えて,これまで政府見解でも禁じられてきた集団的自衛権の行使を容認し,海外での権益を守るなどの名の下での軍事力の行使や,国際平和協力活動の名の下での海外での軍事活動に道を開くものとなる。さらに国民に向かっての治安維持活動も拡大する危険がある。

このような「国防軍」の創設は,国民の平和的生存権をはじめとする基本的人権を危うくし,かえって我が国の安全保障を損なう恐れが強い。

第1に,「国防軍」の創設は,自衛隊を他国との軍事協力を可能にして,海外において同盟軍とともに武力行使をできる軍隊とすることを意味する。また,海外での権益を守るなどの名目で武力行使が際限なく拡大することへの歯止めがなくなる恐れがあり,憲法の基本原理である徹底した恒久平和主義を崩壊させて我が国を再び戦争へ導く恐れがある。

第2に,「国防軍」は軍事機密保護法の制定,一般裁判所と区別される軍事審判所の設置,緊急事態宣言などの法制を伴っており,これらは統治機構に対する国民の民主的コントロールを後退させて民主主義の基盤を掘り崩し,平和的生存権をはじめとする基本的人権の保障を極めて危うくする。

第3に,現在,北東アジアにおいては,様々な緊張関係が存在しているが,これらの紛争・対立は,軍事力によって解決すべきものではなく,あくまで平和的方法による協調的・地域的安全保障の形成による解決こそが強く求められている。このような状況の中で自衛隊を「国防軍」とし,海外において戦争のできる軍隊とすることは,先の大戦の深刻な反省のもとに採用された恒久平和主義を放棄するものと各国から受け取られ,北東アジアの緊張を増大し,かえって我が国の安全保障を損なう恐れが強い。

今,我が国に求められているのは,何よりも日本国憲法が目指す個人の尊重を根本とした立憲主義に基づく基本的人権の保障であり,軍事力によらない平和的方法による国際的な安全保障の実現のためのリーダーシップの発揮である。

したがって,弁護士法の定める「基本的人権の擁護と社会正義の実現」という使命に立脚し,改めて日本国憲法の前文の平和的生存権や憲法9条に示された基本原理である徹底した恒久平和主義の意義及び基本的人権尊重の重要性を確認し,ここに「国防軍」の創設に強く反対するものである。

以上,議論があるところだと思いますが,原文のまま引用しました。

http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/civil_liberties/year/2013/2013_3.html

 

久々にブログを書くと固いことばかり書いている気がしますが,広島の夜に食べた海の幸・日本酒,そして昼に食べた広島焼が格別であったことは言うまでもありません。

2013年10月15日

瀨戸一哉